第1回　2021年11月10日
　劇場版「月光仮面」シリーズ第1作が公開されたのは昭和33年、1958年。テレビシリーズのムーンライト号とは違って、大画面で映画の迫力に見劣りしない車両が要求されたためか、大型車両が採用された。それが、当時戦時中から軍用車両として活躍した「陸王」だった。

　一口に「陸王」といっても、これは社名（ブランド名且、車名）で、車名の「陸王」にも250ｃｃ、350ｃｃ、750ｃｃ、1200ｃｃ、と排気量の違いで車種は異なる。

　映画「月光仮面」のムーンライト号はというと、1200ｃｃは軍用車両のサイドカー付き車両に採用された流れで戦後もそれを継承していたようなので、おそらく750ｃｃRQ型という見方が強い。

1200ｃｃVFE-LTS型　サイドカー車両

　1200ｃｃがサイドカー車両専用だったのは、運搬などに利用されたため、1200ｃｃという高排気量が必要だったためと思われる。バイク車両を”単車”としてみたとき、実際のところ機動力を発揮しながらパワーを有する規格としては、750ｃｃレベルが最強なのだ。

　したがって、ムーンライト号「陸王」は”陸王750ｃｃＲＱ型”だっただろうと推定できる。

第2回　2021年11月11日
　月光仮面初代ムーンライト号（映画版）は”陸王750ｃｃＲＱ型”だと推定してもよさそうだ。

　ちなみに、テレビシリーズのムーンライト号はというと、これははっきりしていて”ホンダドリームＣ７０”である。お茶の間テレビ画面サイズでは、むしろこのクラスの規格のほうが、月光仮面が活躍するにはよかったのかもしれない。

　「陸王」については、その歴史的変遷について、少し見ておこう。（参照：Wikipedia）

1912年（大正元年） - 日本陸軍が初めてハーレーダビッドソンを輸入する。
1917年（大正6年） - 大倉商事が輸入販売を開始する。
1918年（大正7年） - 軍用としてサイドカー仕様が納入される。
1931年（昭和6年） - 三共が販売ライセンスを譲り受け、日本ハーレーダビッドソンモーターサイクル（株）を設立。輸入販売を開始する。
1933年（昭和8年） - 日本ハーレーダビッドソンモーターサイクル（株）が製造ラインを含めて生産ライセンスを取得して、国内での生産を開始する。
1935年（昭和10年） - 日本ハーレーダビッドソンモーターサイクル（株）から三共内燃機（株）に社名を変更する。
1936年（昭和11年） - 側車輪駆動二輪車仕様の陸王号が「九七式側車付自動二輪車」として日本陸軍に採用される。公募により名前が「陸王」に決定する、三共内燃機（株）から陸王内燃機（株）に社名を変更する。
1949年（昭和24年） - 陸王内燃機（株）が業績不振のため倒産。生産停止になる。
1950年（昭和25年） - 昭和飛行機が事業を引き継ぎ、陸王モーターサイクル（株）を設立。生産を再開する。
1959年（昭和34年） - 生産が中止される。
1960年（昭和35年） - 陸王モーターサイクル（株）が倒産。

　「陸王」の生産は1959年に中止されている。映画版「月光仮面」のシリーズ第一作が、1958年なので、ギリギリ滑り込みセーフで、ムーンライト号に採用されたことになる。

　なんとも因果なことである。

第3回　2021年11月12日
　そこで、ムーンライト号について整理してみると、

　テレビシリーズ　：　ホンダドリームC70

　オリジナル映画シリーズ　：　陸王750ｃｃＲＱ型

　桑田次郎版「月光仮面」（但し後年の作画）　：　ホンダCB750

　アニメ「月光仮面」　：　？

　81年版映画「月光仮面」　：　ホンダCB750

のようになる。不明なのは、アニメシリーズのムーンライト号だが、アニメといえども、そこには元になるイメージがあるはずで、モチーフとなった元車が想定されているはずである。ホンダCB750（ドリームCB750four）は1969年発売。アニメ版「月光仮面」が1972年度作なので、この流れから行くと、アニメ版のムーンライト号もホンダCB750をモチーフにした可能性が高い。

第4回　2021年11月13日
　桑田次郎版「月光仮面」、後年の作画はムーンライト号はCB750だと思うが、オリジナル原作版をあらためて見てみると、ムーンライト号は「陸王」のようである。
　桑田次郎の作画は非常に緻密な作画で定評があるので、このムーンライト号も現車を忠実にデッサンして仕上げたものであることがわかる。

桑田次郎「月光仮面」：左　後年描かれた一枚、右　原作オリジナル版

　こうやって見てくると、”ムーンライト号のオリジナルは「陸王」だった”というのは正解で、もし生産中止がなければ、”その後”も「陸王」だったかもしれない。

第5回　2021年11月13日
　ここまででムーンライト号の全体像がつかめたと思うので、あらためて「月光仮面」のミュージッククリップを　”ムーンライト号”　に注目して堪能していただきたい。

　テレビシリーズ、映画バージョン、それぞれ　”ドリームC70”、”陸王”　の味わいを堪能できるかと思います。また違った形で、「月光仮面」を楽しめるのではないでしょうか。

第6回　2021年11月19日

　その後の「陸王」。

　生産中止になって久しいので、現在”新車”は存在しないが、一部の愛好家によって旧車レストアされ、”新車そのもの”という個体もあって、愛され続けているようです。

　You-Tubeなどにupされていますので、楽しんでいただければと思いますね。

　ムーンライト号はというと、月光仮面が不滅なようにムーンライト号も不滅ですね。時代ごとに継承されて、またリメイクなどされれば、新たなムーンライト号が生まれてくるでしょう。

　近年、舞台化される企画があったようですが、コロナ禍で断ち切れになっているようで？、是非また再企画してほしいですね、「月光仮面」。

エピローグ　2023年11月20日　月夜に蝙蝠

　月光仮面とレインボーマンは川内康範作の兄弟作だが、レインボーマンはヨガの秘術で縦横無尽に活動できるので映像作品として描くのに自由度が高い。月光仮面はというと、生身の人間がバイクに乗って活躍するので、かなりの制限がある。現代的にはCGを駆使すればかなり面白いものができるとは思うが、日本の交通事情も時代とともに変わって、こういうスタイルで活躍させるのはちょっと厳しいか。現代的に描くとすれば、コスチュームも含めてリアリティーを持たせるべきかもしれない。その中核になる精神を据えながらも大胆にイメージにてこ入れをする。例えば、バットマンのように、とイマジンしてみた。月夜にコウモリ。白か黒か、月光仮面とバットマンは、表現は違うがそこで描かれているスピリッツは同じだと思う。アニメ版第一話では面白いことに、月光仮面が戦う相手はコウモリ男なのだが....ｗ。

　そもそも、月光仮面とは、どこかの誰かではなくて、どこの誰でもある。特定の人物ではなく、特定しえない誰かという認識を持っている。また、変身した後のコスチュームは現実のものではなく、イマジネーションの中の精神を具現化したものということ。あのバイクに乗って活躍するシーンはすべてイマジネーションの中の葛藤を描いていて、現実世界で生きる人間が、日々、日常の中で善と悪の戦いを繰り広げている世界、それを表現したものという捉え方。それはバットマンも同じで、そうであるがゆえに多くの人の共感を得、またそれゆえに根強い人気がある。男子一日に百戦す....いや、男も女も皆日々戦っている、ということではなかろうか。